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た。

「……ただいま」

玄関に転がっている靴を見つめながら、誰にも聞こえないような小さい声で呟く。リビングには明かりがついていて、時折、人の笑い声のような雑音が耳に入ってくる。歩はテレビでも見ているんだろうか。このときばかりは、リビングを通らなければ2階に上がれない家の構造を恨んだ。

ゆっくりと家の中に上がりこみ、リビングの戸を開ける。襲ってくるような冷気に身震いし、健人はそっとリビングの中に入った。リビングはテレビだけが虚しくついていて、中には誰もいない。この隙をついて、健人はすぐに2階へと上がった。階段を駆け上がり、自分の部屋へと飛び込む。玄関と同じようにムッとした部屋の中は、電気も付いていない�